あるSNSで霊的同伴が話題になり、自称霊的同伴者がいるらしいという噂を耳にしました。

 いや、そう言われれば、私もプロフィールなどに「霊的同伴者」と載せているので、自称霊的同伴者になるのかな。(汗) 

 実際、霊的同伴者(spiritual director)というものは、カウンセラーや公認会計士のように国や州などが正式に認定する資格ではなく、名乗ろうと思えば、誰でも名乗ることはできます。少なくともアメリカや日本では、この働きを担う人を正式に認定する機関は(今のところ)存在しません。

 霊的同伴者(spiritual director)の認知度は、アメリカでもまだまだだと思いますが、それでも、この数十年の間に爆発的に広まったとも言えるようです。その流れに乗って、霊的同伴者としての訓練を受けることもないままに、霊的同伴者を名乗る人も出てくるかもしれません。(実際にそういう人がいるという話は聞いたことがないのですが、可能性としては十分あります。)

 アメリカの場合、霊的同伴者を探すのに、Spiritual Directors International(SDI)、Evangelical Spiritual Directors Association(ESDA)、Transforming Center(TC) などの霊的同伴者ディレクトリー(登録者のリスト)があります。SDIは、クリスチャンの同伴者だけでなく、いろいろな宗教・霊性の同伴者が登録されています。ESDA(福音主義霊的同伴者協会)で登録するためには、キリスト教の信仰基準への同意と同伴者になるための訓練を修了している必要があります。TCに登録するためには、TCが行っているクリスチャンの霊的形成のためのプログラム("Transforming Community")と、霊的同伴者になるための訓練を修了していることが条件になります。ただ、どの団体も、霊的同伴者として登録するためには年会費を払う必要があるため、こういった条件を満たしていても、登録していない同伴者は大勢います。そもそも霊的同伴とは大々的に行うものではなく、一人の同伴者が同伴できる人の数はそう多くないので、同伴者の立場からすると、わざわざ登録しなくても口コミで十分なのです。(ちなみに私は、TCの名簿に登録しています。)

 それでも、霊的同伴者を探す立場からすると、やはりなんらかの基準がほしいですよね。現時点では、日本語で霊的同伴をしている人はまだそう多くないだろうと思いますが、今後どんどん出てくる可能性はあります。(そして、私はそうなることを願っています。)

 そこで、もし「霊的同伴者」を自称している人がいて、その人に同伴をお願いしても大丈夫だろうかと迷われたら、次の質問をしてみることをお勧めします。

1. その人自身は、これまでどれくらい霊的同伴(スピリチュアル・ディレクション)を受けてきているか。現在でも受けているか。
   自分は同伴を現在受けていない、という人は避けておいたほうがいいと思います。
2. 霊的同伴の働きをするためのなんらかの学びや訓練を修了しているか。あるいは現在訓練を受けている最中で、スーパーバイザーがいるか。
 霊的同伴の学びを提供するプログラムは近年アメリカでは増えていて、おそらく玉石混交だと思われます。前述のESDAは、ESDAが適切と思う訓練プログラムの基準として次のことを挙げています。(こちら

  • 最低二年間の訓練。At least a two year period of enrollment for students, with the majority of that time engaged in the educational material and training.
  • 誰でも入れるプログラムではなく、入るにあたり志願者の霊的同伴者としての適正が評価される。(牧師やほかの同伴者からの推薦状があるなど。)An admission application process intended to determine an applicant’s readiness and suitability to the training at that time and to the ministry overall.
  • 訓練の期間中もずっと霊的同伴を受け続ける。A requirement for students to be receiving spiritual direction throughout the duration of training.
  • その訓練は有料である。A program tuition fee.
  • インストラクターと対面での学びである。Face-to-face encounters with instructors, either regularly over the course of the program or in intense residency periods. Additionally, instructors are available to their students on an as-needed basis.(中村コメント:ズームなどで顔を合わせられる通信教育はアリだと思います。除外されるのは、たとえば録画された動画のみで、インストラクターから直接の指導を受けられない講座だと思います。)
  • その学びは霊的同伴のミニストリーに有益なトピック(たとえば霊的同伴の歴史、霊性ケア、霊的発達、祈り、傾聴スキル、識別、みことばなど)をカバーするものである。Coursework which addresses a number of topics that support the ministry of spiritual direction, including but not limited to the theory and history of spiritual direction/soul care, spiritual development, prayer, use of Scripture, listening skills, discernment, etc.
  • 霊的同伴の伝統を幅広くカバーする資料を読むことが求められる。Additional required and recommended readings that acknowledge the breadth of the spiritual direction tradition and its various styles beyond the main modality or tradition of spiritual direction focused on by the program.
  • 最低二人の人に対して最低20時間、実際に同伴する経験をする。A practicum experience where students apply the skills of spiritual direction through practice with other students and by giving direction to at least 2 different individual directees. Upon completion, a student will have given a minimum of 20 hours of individual spiritual direction.
  • 最低10時間のスーパーヴィジョンを受ける。Required supervision, experienced one-on-one with instructors and/or in peer groups, for a minimum of 10 hours over the course of the program.
  • 学びの期間中を通して、学んでいる本人の霊的成長に強調が置かれる。An emphasis on students’ personal spiritual growth throughout the program. Through course requirements, students must regularly receive personal spiritual direction, and be encouraged to attend to their spiritual growth through such practices as prayer, journaling, spiritual disciplines, group direction, retreats, etc.
  • 霊的同伴のミニストリーにおける倫理問題にも注意を払う。An intentional focus on ethical issues related to the ministry of spiritual direction, including encouraging its participants to continue their growth and education as spiritual directors beyond the program and ongoing throughout the life of their ministries.
  • 訓練期間の修了時には、修了証書を発行する。An acknowledgement of successful completion of the program by granting a certificate of completion or diploma.
 私が訓練を受けたプログラムも、ESDAのリストに出ています。(こちら Christos Centerです。)このリストには出ていませんが、カトリックの良いプログラムもあると思います。

3. 学びの修了後も、継続してピアスーパーヴィジョンまたは1対1のスーパーヴィジョンを受けているか。
 これはとても重要なポイントだと思います。霊的同伴の働きをするためには、本人も同伴を受け続け、なおかつスーパーヴィジョンも定期的に受けていることが必須です。


 まとめますと、どなたかに霊的同伴をお願いする場合、その方自身が現在進行形で霊的同伴を受けていること、スーパーヴィジョンも受けていること、霊的同伴のミニストリーに整えられるためのなんらかの訓練・学びをしていること、この3点を確認するといいかなぁと思います。(もちろん、どれも自己申請なので、保証はないのですが。)言い方を変えると、「霊的同伴者」を名乗るのであれば、この三つのポイントはクリアしていてほしいかなと思います。

 最終的には、やはりだれか知っている人の紹介があれば、安心でしょうか。もっともそれでも、「相性」のようなものがあるので、実際に話してみて、この人はちょっと違うと感じることもありうるのですが、それは、その人が同伴者として不適格という意味ではありません。

 一方で、霊的同伴という言葉や概念は知らないままに、まさしく霊的同伴者がするように他者に寄り添う働きをしておられる方々もいると思います。つまり「霊的同伴者」を自称していないけれども、実質、同伴しているという方。「ミニストリー」としてではなく、その人の自然なあり方として、他者の言葉にじっくりを耳を傾け、寄り添って歩む、そういう方々もおられると思います。そもそも霊的同伴の訓練を受けに来る人は、そういう方であることが多いみたいです。

 霊的同伴は、召し(ギフト)か訓練(努力)か、と議論されることがありますが、両方なのです。訓練すればだれでもできるというものでもないし、召しがあれば訓練は必要ない、というものでもなく。音楽家やスポーツ選手が、生まれながらの賜物(ギフト)を持ちつつ、なおだれよりも練習に励むのと似ているかもしれません。日本にも、潜在的霊的同伴者は大勢いるはずだと思っています。

IMG_0048
Christos Center for Spiritual Formationが提供する、霊的同伴のミニストリーに整えられるためのプログラム、Tending the Holyの修了証書。(2016年5月)

 なお、プロフィールに「霊的同伴者」と載せていると違和感がある、というのは分かる気もします。確かにそうですよねぇ。私としては、このミニストリーの認知度を上げたいという思いもあって、あえて出していますが、違和感、あるかもしれないですよねぇ。。。