ビーズは、カトリックのロザリオ、仏教の数珠、イスラム教やヒンズー教のマラなど、昔からいくつかの宗教で祈りのツールとして用いられてきました。

祈りのツールとしてのビーズは、ビーズそのものに力があるとみなされるのではなく、祈りの言葉を繰り返すときにその数を数えるためのもの、または主の戒めを順番に思い出すためのものだそうです。民数記15:38−40には、主がモーセに、着物のすその四隅にふさをつけるよう命じている箇所があります。それは「あなたがたがそれを見て、主のすべての命令を思い起こし、それを行なうため」であると主は言われます。

また、初期のクリスチャンである砂漠の師父たちは、祈るときに袋に入った小石を用い、「イエスの祈り」などを祈るとき、何度祈ったかを数えるために用いていたそうです。さらに東方正教会の修道士・修道女たちは、祈りのロープという33の結び目のついたロープを祈るときに用いました。33という数字は、イエスの生涯33年を表すものです。このロープの結び目も、小石と同じように祈りの回数を数えるためのものです。

1980年代に、観想的な祈りを実践するアメリカの聖公会の祭司たちが、祈りのときに用いるツールとして、カトリックのロザリオや正教会の祈りのロープを参考にして、アングリカン・プレヤービーズまたはアングリカン・ロザリーと呼ばれるプロテスタント版のロザリオを作りました。それにより、一部のプロテスタントの間でも、祈りのときにビーズを用いることが行われるようになりました。ビーズをたぐるという単純な手の動きは、堰を切ったように祈りの言葉を出すのでなく、ゆっくりと、集中して、黙想しつつ祈ることも助けてくれます。

アングリカン・プレヤービーズは、カトリックのロザリオに似ていますが、ビーズの数はカトリックのロザリオより少ない33個です。

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この図のように、十字架、大きなビーズが5つ、二つの大きなビーズの間には小さなビーズが7つ(「週」と呼びます)があります。週ビーズをはさむ4つの大きなビーズは、十字の形を作るので、「十字形ビーズ(cruciform beads)」と呼ばれます。5つめの大きなビーズは「招詞ビーズ(Invitatory bead)」と呼ばれます。招詞ビーズとその上の十字形ビーズの間にさらに小さなビーズを一つ加え、イエスの復活と今も生きておられることを覚えるための「復活のビーズ」とするものもあります。

このプレヤービーズを用いて祈る方法に絶対的な決まりはありませんが、基本的な方法は、複数の祈りの言葉を決め、それぞれのビーズに割り当て、ビーズに触れながら、その割り当てられた祈りを祈る、というものです。

たとえば、次のような祈りを割り当てることができます。

十字架 (祈り始め)
神よ、私を救い出してください。
主よ、急いで私を助けに来てください  (詩篇70:1)

招詞ビーズ(一回目)
栄光は 父と子と聖霊に
初めのように、今も 世々に限りなく アーメン

十字形ビーズ
主よ 私たちの主よ
あなたの御名は全地にわたり
なんと力に満ちていることでしょう
あなたのご威光は天でたたえられています (詩篇8:1)

(イエスの祈り)
主イエス・キリスト、神の御子
罪びとの私をあわれんでください

招詞ビーズ(2度目)
わがたましいよ 主をほめたたえよ
私のうちにあるすべてのものよ
聖なる御名をほめたたえよ  (詩篇103:1)

十字架 (最後)
(主の祈り)
天にまします我らの父よ
願わくば御名をあがめさせたまえ
御国を来らせたまえ
御心の天になるごとく
地にもなさせたまえ
我らの日用の糧を 
今日も与え給え
我らに罪を犯すものを 
我らが赦すごとく
我らの罪をも許したまえ
我らを試みにあわせず 
悪より救い出したまえ
国と力と栄えとは 
限りなく汝のものなればなり アーメン

まず、これらの祈りを暗記します。
そしてビーズを手に持ち、まず十字架に触れながら、「神よ 私を救い出してください…」と祈ります。
次に招詞ビーズに触れながら、「栄光は父と神と聖霊に…」と祈ります。
次に十字形ビーズに触れながら、「主よ 私たちの主よ…」と祈ります。
次に今触れた十字形ビーズの右側にある「週」のビーズに触れ、「主イエス・キリスト、神の御子…」と祈ります。一つひとつに触れながら、7回繰り返します。
次の十字形ビーズに触れながら、 「主よ 私たちの主よ…」と祈ります。
次の週のビーズに触れながら、 「主イエス・キリスト、神の御子…」を7回祈ります。
一巡して五回目に十字形ビーズに触れながら祈ったら、もう一度 招詞ビーズに触れ、今度は「わがたましいよ…」と祈ります。
そして最後にもう一度十字架に触れつつ、主の祈りを祈って終えます。

それぞれのビーズに割り当てる祈りは、自分で決めてかまいません。詩篇や祈祷書などを参考に、自分にしっくりくる祈りを当てはめてみてください。
私がプレヤービーズを使って祈るときの祈りは、こちらで紹介しています。 

 

肝心のプレヤービーズですが、上の図を参考に、自分で作ることができます。
私も、いくつか自分で作ってみました。
たとえばこれなど。
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(釣り糸など、頑丈な糸を使わないと、使っているうちに切れてしまうのでご注意を。ビーズを何度もたぐると糸が擦れるので、切れやすくなってしまうのでしょうか、私も何度か切ってしまい、作り直しています。)

また、こういう簡易形のビーズ(「チャプレット」と呼ばれます)もあります。これは、「週」の部分を円形につなぐ代わりに、その両端にある大きいビーズを十字形ビーズとみなし、ビーズに触れながら二往復します。そうすると、週を4回、十字形ビーズを5回祈ってから、再び招詞ビーズに戻ります。(十字架の反対側にあるものは、ただの飾りです。)

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さらに、もっと小型で、指輪になっているものもあります。ただしこれは、カトリックのものなので、「週」の7つのビーズではなく、10のビーズからできています。これは、カトリックの神学校の書店で購入しました。カトリックの人は、ロザリオの代わりにこれを使って祈ることもあるそうです。
 
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