みんは一昨日の晩から心臓科のICUに移され、翌朝いちばんに、肺にカテーテルを入れる処置と、心嚢開窓術という処置を同時に受けた。(手術は朝7時からだったので、私も6時半過ぎには病院に来た。)腹水やら胸水が溜まるのは末期ガンの症状らしいけれど、みんの場合、胸水と、心臓の周りの心膜腔にたくさんの水が溜まっていた。

 胸水のせいで呼吸が浅く、困難になり、 
心膜腔の水のせいで心臓が圧迫され、心拍数がひどく上がっていた。心膜腔の水はそのまま生命の危険につながるそうで、早急な措置が必要とされる。いったん管を通して水を抜いたものの、数日のうちにまた溜まり始めたため、より恒久的な措置が望ましいということで、今回は心嚢開窓術を受けた。これをすると、たとえガン性のものであっても、85%の人は、もう水が溜まらなくなるのだそうだ。

 一回の手術で両方の処置をしてもらうことができたのでよかった。(心臓外科医と呼吸器科の肺の専門医の、二つの科の医師が関わるので、二チームのスケジュールをコーディネートするのに結構時間がかかったけれど。) 
心膜腔の水は750ml抜いたそうで、それは、心膜腔に溜まる分としては非常に多かったそうだ。一方、肺の方は、今回は250mlだけだったらしい。これまでは1回に1.5~2リットルを抜いていたのだから、だいぶん溜まるのが少なくなってきているわけだ。いいぞ!

 手術が終わって、ICUの病室に戻ってきたときのみんは、麻酔から覚めたばかりで、ひどい痛みの中にあった。病院では痛みの強さを表現するのに1〜10のスケール(10が最大)で表すのだけれど、みんは10だった(痛みは主観的なものなので、自己申告だけれど)。みんは痛みには強く、黙ってじっと耐えるタイプ。最大級の痛みだったにもかかわらず、最初のうちはうめき声をもらす程度で、必死に耐えていた。それでも、最初に打ってもらった痛み止めが全然足りなくて、痛みが長引くにつれて、さすがに我慢ができなくなったらしく、大声で叫びだした。みんがそこまで叫ぶのだから、よほど痛かったに違いない。

 そして、

 「Why does God hate me so much?
  Why doesn't He just kill me?
  I'd rather die!
  I want to die!」 

と泣き叫んでいた。(涙)

 痛み止めを打つにも、担当医のオーダーが必要で、オーダーをもらってからそれを薬局に伝え、それから薬や必要なシリンジだのポンプだのが病室に運ばれてくるのに時間がかかり(麻薬系の薬だし、多分、一般的な分量よりも多いとか、そんな感じだったのだろうと思う)、痛みがコントロールされ始めるまでに2時間くらいかかった。声をかけても、手をさすっても、みんは怒るばかりで、こんなときに親は何の役にも立たず、何と無力なこと…

 みんがガンになったとき、私の父が最初に言ったのは、「痛い思いだけはさせないでやってくれ」だった。父の母(私の祖母)が60代でガンになったとき、医師からモルヒネの使用を勧められたのだけれど、父は、モルヒネなんか使ったら廃人になると思い、断ったのだそうだ。そして祖母は、痛みを十分にコントロールしてもらえないまま、苦しみながら亡くなった。今から40年以上前のこと。父はのちに末期ガンでモルヒネを使用するのは当然のことで、ちゃんと医師の処方のもとで行えば何の問題もないことを知り、母に苦しい思いをさせてしまったことを、今日に至るまで悔やんでいるのだそうだ。なので父は、みんには痛い思いをさせないでやってくれ、と私にいの一番に言ったのだ。だから私も、みんが痛い思いをしているのを見ると、何重にもつらい…

 話が逸れたが、みんは今回、PCA(自己調節鎮痛)ポンプというものを使って、痛み止めが欲しいと思ったらいちいちナースを呼ばないでも、自分でボタンを押して薬が点滴を通して投入されるようにしてもらった。一回の投与量は通常よりもずっと少なく、そのかわり10分に一回のペースで投入してもオーバードースにならないようにちゃんとコントロールされているらしい。(みんは、痛みがひどかったため、6分に一回のペースで投入できるように調節してもらっていた。)

 私は5時半ごろまで病室に付き添っていたのだけれど、そのころには痛みも10点スケールで3(痛いけれども我慢できるというレベル)になっていた。痛みが落ち着くと、いつものみんが戻ってくる。

 「I love you, Mom」
 「Thank you for everything, Mom」
  「I'm thirsty. オミズアゲテクダサイ。」(give me が「あげてください」になるのが可愛い)

 途中で、 用務員さんがゴミや汚れたシーツを回収に来たのだけれど、その人にも、「Thank you so much , Sir」と声をかけていた。用務員さんにSirと呼びかけるのがみんのこだわりというか、みんらしいところ。あの子は見過ごされがちな人たちには、いつも意識して特に敬意を示すのだ。

 みんは、Why does God hate me so much?と叫んだけれど、違うのよ、違うの。

 あなたの心があまりにも美しくて、あなたが神様にあまりにも愛されているから、サタンがあなたのことを憎んだの。サタンがあなたに神様のことを呪わせようとして、あなたを苦しめているのよ。

 ああ神様、あなたがヨブにご自身を現し、苦しみの中でヨブに出会われたように、どうかみんにもご自身を現し、みんとも出会ってあげてください。みんが決してあなたに見捨てられたわけではないことを、あなたに憎まれているわけではないことを、どうぞ、あなたご自身がみんに知らしめてあげてください。ああ、神様、伏してお願いいたします。みんが苦しみの中にいるとき、あなたがわからなくなってしまっているとき、どうぞその場所でみんに出会ってあげてください。みんを抱きしめてあげてください。そしてヨブが告白したように、みんも告白できますように。

 「あなたには、すべてができること、
  あなたは、どんな計画も成し遂げられることを、
  私は知りました。 ……
  
  私はあなたのうわさを耳で聞いていました。
  しかし、今、この目であなたを見ました。…」
 
William_Blake
( William Blake, God meets Job)