ケンは小学校5年生のときに、学校の音楽の授業の一環でバンドに入った。サックスを始めたが、中学(日本の中学2年生) を卒業するまではたいして興味がなかったようで、ろくに練習していなかった。

 けれども高校生になってからスイッチが入ったのか、俄然練習するようになった。多分、上手な上級生たちから刺激を受けたのだと思う。学校での練習に加え、家でも毎日、1〜2時間練習する。頑張った甲斐があり、昨年受けたジャズバンドのオーディション(学内の)で、上級生のグループに入ることができ、それが本当に楽しいらしく、今はすっかりジャズにはまっている。ケンやケンの友人たちが話しているのを聞いていると、ジョン・コルトレーンだとかチャーリー・パーカーだとかの名前が出てきて、なんだかニヤニヤしてしまう。ケンの親友は二つ年上のジェイソンで、彼がケンにいろんなことを教えてくれるらしい。ジャズのいろははジェイソンから学んだと言っていた。お姉ちゃんたちに囲まれて育ったケンにとっては、お兄さんのような存在なのかもしれない。

 ケンは、学校ではみんなからサックスが上手だと言われているらしいが、本人は、自分にサックスの才能があるわけではなく、人一倍努力して練習しているからそれなりに吹けるだけだと自覚している。練習は大変だけれど、うまく吹けるようになったときの満足感は大きいし、ほかの上手な人たちと一緒に演奏するのがものすごく楽しいらしい。

 サックスのほかにも彼が今がんばっていることが二つある。ひとつはテニス。彼は何を思ったのか、去年の3月からテニスを始めた。しかし、ケンは実はあまり運動神経がよくない。案の定、テニスも悲惨で、まぁまったくの初心者として始めたのだから無理もないけれど、昨年のシーズンは試合では1勝だけで、あとは全敗だった。テニスの試合から帰ってきて、「どうだった?」と聞くのも申し訳ないくらい、毎回「また負けた」だった。(笑)毎回負けるケンを優しく受け入れてくれているチームメイトたちにも感謝だ。

 アメリカの学校のクラブ活動はシーズン制で、シーズンごとに違う活動をする。テニスも、春のシーズンが終わると次の年までお休みになる。散々な対戦成績だったにもかかわらずテニスを続ける気満々のケンは、昨年の秋からこの冬にかけて、テニスの個人レッスンを受けることにした。ケンの幼馴染のお父さんにテニスコーチをしている人がいて、彼がオファーしてくれたのだ。しかしやっぱりケンは相当ヘタだったらしく、コーチは「あまりにも下手すぎて、グループレッスンにもついていけないだろう」と言っていた。(汗)ああ、なんとはっきり真実を語ってくれるコーチだろう!(笑)


 でも、そんなにヘタなのに、ケンはテニスを続けたいという。練習して前回より少しずつうまくできるようになっていく感覚が気持ちいいいのだそうだ。

 ケンは、学校の成績は良い。勉強に関しては、今のところ、特に努力しないでも楽々良い成績がとれるようだ。宿題も、私が黙っていても、毎日さっさとやっている。努力しないと言っても、怠けるわけではなく、やるべきことはちゃんとやる。まず宿題を終わらせて、それから夜の10時か11時頃になるとサックスの練習を始めて、それが1〜2時間続くという感じ。(ケンが練習するTake Fiveを聴きながら眠りにつくのも悪くない。^^ ) また、数学などで苦戦している友達がいると、よく教えてあげている。先日も病気で学校を数日休んで数学がわからなくなってしまったという友達のために、アイスクリームを持って数学を教えに行っていた。

 もうひとつ最近がんばっているのは、数学。これは学校の数学ではなく、お父さんと一緒に何やら問題を解いている。二人が数学の話をしているのを聞いても、私はまったくついていけない。

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(その辺の紙に書き散らした計算)

 ケンを見ていて偉いなーと思うのは、努力して何かを達成することの喜びを知っていることと、よいwork ethics(勤労意欲)があること。(コツコツ頑張ることは、おそらく、小さいころから何時間もかけて複雑な折り紙に挑戦したり、数ヶ月かけてハロウィンのコスチュームを手作りしていたことによって培われたのだろう。)テニスに関しては、多分チームで一番ヘタで、テニスをしているときのケンは、おそらくかなり不恰好なのではないかと想像する。でも、格好悪く見える自分を恥ずかしがったり嫌がったりすることなく、テニスそのものの楽しさと、努力することの喜びを追求しているケンは素敵だ。
 
 このまま元気で真っ直ぐに育っていってくれますように。

 
いつかこんなふうに演奏できるようになったらいいね〜