いよいよ明日はアメリカの大統領選挙です。1984年にアメリカに来て以来、もう何度も大統領選を見てきましたが、今回ほど悲惨だと感じる選挙はありません。多くの人たちが、どちらの候補者のほうが良いか、ではなく、どちらの候補者のほうがより嫌ではないか、という基準で投票せざるをえない大統領選なのですから。しかし、これだけ悲惨だと、かえって人間の為政者や政治システムに対する期待もなくなり、究極的にすべてを治めているのは神だという現実に深い慰めと励ましを覚えます。

 クリスチャンが政治に関心を持ち、関わっていくのは良い事だし必要だと思いますが、アメリカの教会はこれまで、右でも左でも、あまりにも特定の政党にテコ入れし過ぎてきました。今回の状況は、アメリカの教会にとってもよいWake-up callなのかもしれません。そう思うと、この悲惨な状況の中にも主がおられることを感じます。

 そんなことを思っていたら、今朝、ユダヤ教霊性センターからのニュースレターが届き、そこで、大統領選挙の週を迎えるにあたって、ある霊的修練が勧められているのを読みました。

 Silence(沈黙)とForbearance(忍耐・寛容)です。 

 選挙をめぐる喧騒から離れたい意味もあって、私はすでにFacebookをお休みしていましたが、それは余計なことを口走らないようにする(汗)沈黙の実践でもありました。(そのかわり、ブログの更新頻度は増えましたが、ブログに書くのとFBにポストするのでは、ずいぶん違うので…) ニュースメディアには目を通していましたし、ツイッターは続けていますが、それでもあちらこちらから聞こえてくるさまざまな声から退き、自らも口数少なくしていることは、思いをより神様に向けることができるので、特に今のような状況では役に立ちます。

 このニュースレターで紹介されていた沈黙の修練は、具体的にはこのようなステップになっていました。

 Set an Intention: ニュースを見る前に、一呼吸置き、これから見る知らせやそれに伴う自分の体験(それがどのようなものであっても)を、どのようにして受け取り、どのようにして自分の心に抱きたいと願うか、自分のうちにヴィジョンを思い描く。(どういう結果を見たいというヴィジョンではなく、どんな結果を見ることになるとしても、どういう心構えでそれを受け取るか、というヴィジョン)
 
• Bear witness: 自分の内側に湧いてくる思いを抑圧せず、どんなものが浮かんでくるかを意識する。特に、それが自分の体にどのような形で現れるかに注意を払う。(怒りか、絶望感か、安堵か、平安か。何らかの主からの語りかけか。体がこわばるか。震えるか。呼吸はどうか、など)自分にそのような反応を起こさせることになった知らせそのものに注意を集中するのでなく、現れる身体的反応を和らげることに思いを向ける。

• Pause:  10分から30分おきくらいに、テレビなどを消し、静かなところに座る。自分の活動を止めて静まるときに、そこになにが現存し、自分にとって物事がどのように異なるものになるかに注意を払う。そして最初に思い描いたヴィジョンに戻る。

• Feel the feels: 自分のうちに湧いてくる感情を感じる。その感情すべてに従って行動する必要はないが、感じているものは否定しない。
 
 Forbearance(忍耐・寛容) の修練は、次のような説明がありました。まず、人間の感情とは、往々にして極端に振れやすいので、何が健全な「中庸」の状態なのかを意識すること。たとえば、低い自己観と高慢の両極端の中間は、健全な謙遜です。今回の選挙のようなケースでは、両極端にあるのは激しい爆発的な怒り(感情的に深く入り込みすぎて現れるもの)と無気力・無関心(感情的にまったく切り離してしまった状態)で、その中間は忍耐・寛容を伴う健全な怒りです。
 「Forbearanceとは、自らを切り離すことなしに感情的な不快と共存する力(the ability to stay with emotional discomfort without disengaging)です。怒りの感情(自分自身のものであれ、自分とは異なる政治的立場の人のものであれ)は、それを無視したり、却下したり、そっぽを向いたりすることなく、向き合っていかなくてはなりません。」
 無関心・無気力に陥るのでなく、また溢れるままに感情を爆発させるのでもなく、健全な形で怒りに向き合っていくときに有益な修練が、その中庸の状態を表すフレーズを何度も繰り返し、それに思いを巡らすことだそうです。(ちなみに、聖書でよく出てくるmeditateーー黙想、思い巡らしーーとは、知性を使ってあれこれ考えるというより、もっぱら何度も口ずさむことを指します。)怒りの感情に向き合うときに良いフレーズは、「Sweeten anger with compassion (憐れみの心によって怒りを和らげます)」。怒りの感情に振り回されそうになっているときは、これを口ずさみ、黙想することが勧められていました。
 
 今回の選挙のようなケースに限らず、どちらもこれからも役立ちそうな修練です
ね。 

 それから、投票するにあたってのこのユダヤ教霊性センターのラビのことばにも感動したので、ここに引用しますね。


As I cast my vote, I will be praying:  “May this be for blessing and not for curse; for abundance and not for scarcity; for life and not for death.” (Rabbi Lisa Goldstein)


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