最近、「霊的形成」について、立て続けに複数の方から質問を受けた。どうやらアメリカのいわゆるカルトウォッチャー系というか、「見分け(Discernment)」系のサイトで、ダラス・ウィラードやリチャード・フォスターの名前をあげて、霊的形成はニューエイジ系とか、ヒンズー教的神秘主義とか、そのようなことを言っているところがあるらしい。


 最初に指摘しておきたいのは、これは何だ?と思うものが出てきたら、すぐに鵜呑みにするのではなく、疑問を呈して、調べてみるのは良いことだということ。何か新しい動きが出てきたときに、それがどういうルーツを持っているのか、どういう背景を持った人たちが関わっているのか、どういう動機で動いているらしいのかなどを調べるのは、賢明だと思う。なので、今回、おそらくはあまり耳慣れない「霊的形成」について疑問を持つ人が出て来ても不思議はないし、それは歓迎できることだと思う。


 一方で、英語圏にはキリスト教関係の「見分け(Discernment)」系サイト、「カルトウォッチャー」系サイト、「警鐘をならす」「告発する」系サイトがたくさんあり、そういったサイトが提供する情報の中には、有益なものもあるだろうけれど、特定の信条や立場に影響された偏ったものである場合もある、ということ。だから、検索してたまたま引っかかった情報は、それを書いているのがどういう人(団体)なのか、またその人(団体)は、他のことについてはどういう見解を持っているのか、その人(団体)自体の評判はどうか、などといったこともチェックすると良いと思う。そういうサイトの情報は、往々にして玉石混淆で、正しい部分もあれば間違っている部分もあるというのが、実際のところではないだろうか。


 さて、本題に戻って霊的形成に関してだが、率直な話、私も2007年に初めてダラス・ウィラードの本を読むまでは、「Spiritual Formation(霊的形成)」という言葉を聞いたことがなかった。しかし、今では、いたるところで耳にする。というのも、北米では、今や多くの神学校において「霊的形成」で修士号や博士号などの学位を取れるプログラムがあり、学位プログラム以外にも、神学生の教育において、霊的形成を強調するところが非常に増えているのだ。以下は、霊的形成での学位プログラムのある神学校のいくつか。
































 学位プログラムではないけれど、霊性神学で有名なカナダのリージェント・カレッジでも、霊的形成に関するコースがある。


 また、以下の神学校では、学位プログラムではないが、神学生たちの教育において、霊的形成を強調することを明言している。








 このリストは、すべてを網羅するものではなく、ほかにも同様のプログラムのある神学校はたくさんある。


 なお、調べていたら、Lighthouse Trailsという見分け系サイトに、「霊的形成を促進しているキリスト教大学のリスト」なるものがあった。膨大なリストです。




 このサイトは、瞑想・観想・思いめぐらしといったことは、東洋神秘主義的で危険だとしている。そして観想的なことを促進するこれらの大学もすべて「危険だ」として、このリストを作った様子。ちょっとびっくりです。このサイトの主催者は、本気でこれらの神学校がすべて危険だと言っているのでしょうか…? もしかしたら自分のほうが考え違いをしているかも?とは思わないのでしょうか…? (なお、米国の神学校で霊的形成が強調されるようになったのは、第二バチカン公会議に、ATS [Association of Theological Schools]が、神学生教育における霊的形成の重要さを認識するようになったことがきっかけらしいです。参照


 ちなみに、日本の神学校では、関西聖書学院で今学期、「霊的形成」という授業がオファーされているそうです。教えておられるK先生は、タルボット神学校で学ばれた方。実は私は、日本の神学校においても霊的形成が強調されるようになり、そういった授業やプログラムが出てくることを祈っていたので、K先生との出会いは、私にとっての祈りの答えの一つでした!