予定されていた1月2日より、一日遅れで、今日(さっき…夜7時ごろ)エリカがうちを去った。とはいえ、まだ荷物がいくらか残っているので、明日もう一度取りに来ると言っていたけれど。


 引っ越しには、エリカのお母さんも来て、荷物をまとめたり家具を運んだりするのを手伝っていた。お母さんは、何度も私に礼を言っていた。理想的なお母さんではないかもしれないけれど、確かにエリカを愛しているのが伝わってきた。


 エリカがうちに引っ越してくる前の、この夏の終わりのころ、みんが涙目で帰宅したことがあった。どうしたの?と聞くと、エリカのお母さんが送ってくれたのだけれど、車の中で突然、自分のエリカに対する気持ちをみんに分かち合い始めたのだと言う。


 エリカの将来を心配していること、エリカには自分のような人生を歩んでほしくないと思っていること、大学に進学してほしいと思っていること、などなど…


 みんは、「エリカのお母さんは、エリカのことをすごく愛しているんだけど、エリカを上手に助けてあげられないんだね。それでも、すごく愛しているんだよね。I was moved.」と涙ぐみ、それから「I love you, mommy」と私にもハグをしてくれた。


 これは、エリカがうちに来ることになるよりも前の話し。私がエリカがうちに来ることに同意した理由の一つに、この件があったのかもしれない。


 正直言って、私にはこのお母さんの選択は理解できなかった。ちょくちょく助けに来ることのできる距離に住んでいるなら、また食事に連れ出したり衣類を買ってあげることはできるなら、なぜそもそも、一緒に暮らしてあげないのか。なぜ、わが子がよその人の家を転々とするのを、手をこまねいて見ているのか…


 でも、私には分からない、いろいろな事情があるのだろう。


 


 お母さんは今日、私に何度も礼を言った。「ありがとう。3ヶ月間いさせてもらって、エリカは本当に助かりました。これからのことは何とかなるでしょう。本当に助かりました、ありがとう…」


 私には立ち入ったことを聞く勇気も知恵もなく、ただうなずいて立ち尽くすしかなかったのだけれど…


 エリカが去った今、決して後味が悪いわけではないものの(私にできる限りのことはしたし、ここでいったん私からの援助は打ち切るという選択は、間違っていないと思うから…)、爽快感があるとは言えない。


 エリカがうちにいる間、彼女は私に、私がこれまでまったく馴染みのなかった世界を見せてくれた。そういう世界があると、頭では知っていたけれど身近には見たことのなかった世界。できることなら近寄りたくない世界。見て見ぬ振りをしたい世界。神様が、そんな世界を、エリカを通して私にかいま見させてくださった。それはまるで、ガサガサにただれて痛んでいる肌を「ほら、これ、さわってごらん、こんなにガサガサなんだよ」と、私の目の前に差し出したような。私はそれをそっと触って、「うわ、こんなにガサガサで、痛そう…」と、触れた手を慌てて引っ込めたような…


 エリカと過ごした3ヶ月が、これからの私に何を意味するのか、もう少し祈ってみようと思う。