この2、3日の間にたまたま目にした興味深い記事より。


 テンプル大学のローレンス・スタインバーグという有名な発達心理学者の、青年の脳の発達に関する研究について読んだこの記事の執筆者(彼女も心理学者)が、早速そこで学んだことを自分の子育てに当てはめてみた、という話。


 ティーンは「なんでそんなバカなことをするの? ちょっと考えればわかるでしょう?」と言いたくなるような危険なこと、愚かしいことをしたりする。しかし、それはティーンが実際に愚かだからなのではなく、脳の異なる部位の発達速度の違いに関係しているのだそうだ。簡単に言うと、ワクワクするようなことに喜びを見出すことに関する脳の部位は思春期に入ると活発になるが、衝動的な行動を抑えることに関する部位(外側前頭前皮質)は、20代半ばまでゆっくりと発達していく。スタインバーグはそんなティーンの脳を、アクセルだけでブレーキのない車のようだと言った。(恐っ!)


 この研究結果の示唆するものは多く、実際、イリノイ州でも4、5年前にスタインバーグ他のティーンの脳に関する研究結果を受けて、ティーンの運転免許に関する法律が少しだけ変わった。そのときの新聞記事は、私もよく覚えている。


 しかしこの記事の執筆者は、法律と言うまでもなく、すぐにでも自分の子育てに応用できるものがあると言う。つまり、ティーンは、痛みよりも愉しみを動機づけにするほうがよく反応する、という部分。「今やらないと、あとで大変な目にあうよ!」と脅かされるよりも、「今頑張ったら、あとでこんな良いことがあるね!」と言われるほうが、ティーンの行動には変化が現れやすいのだそうだ。今の自分の行動が後に後悔するような結果を生むかもしれない、生むだろう、と分かっていても、衝動を抑えきれないのがティーンの脳。分かっていないわけではないので、いくら脅しても諭しても、あまり効果はないらしい。


 とすると、子供に物事の「結果」について教えるときも、ティーンになったら、ネガティブな側面よりも、ポジティブな側面を強調する方が効果的ということ。なるほど~。この記事の執筆者も、早速そのようにしたら、1週間で目に見える変化が出たと言う。





 要するに、失敗から学べる人の方が、より速く適切に学習できる、という話なのだけれど、興味深いのはこれ。「あなたは賢いね」と知性をほめられた子供よりも、「よく頑張ったね」と努力をほめられた子供のほうが、よりチャレンジ精神を示し、結果的により伸びる、ということ。


 知性をほめられた子供は、失敗して自分が賢く見えなくなってしまうことを恐れる。だから、難しいタスクにあまり挑戦しようとはしない。自分より出来の悪い子と自分を比較し、自尊心をキープしようとする。一方、努力をほめられた子は、積極的により難しいタスクに挑戦し、自分よりできる子と自分を比較し、できる子からさらに学ぼうとする。


 言われてみれば、確かにその通りだなぁと思う。アメリカでは、子供の自尊心(セルフエスティーム)を高めるために誉めることが奨励されるけれど、誉め方も気をつけないと、プライドばかりを育てることになるんだ。


 以前、別の新聞記事で、「誉める子育て」のせいで、アメリカには自分の能力を客観視できなくなり、特権意識ばかりが肥大した若者が大勢いる、というのを読んだことがある。大した仕事もできないくせに、平気で高い給料を要求したりするのだそうだ。親だけでなく、学校の先生もやたらと誉めるので、私も子供たちの先生に対して、「あまり非現実的な誉め方はしないでください」と思うことがあるもの。(ちなみに、子供の特権意識を育ててしまうことの危険は、『聖書に学ぶ子育てコーチング』にもかなり詳しく出ている。)


 なんとも身につまされる話だ~。具体的には、私の子育ても後悔することだらけ。一からやり直せたら、と思うことも数知れない。それでも、私の失敗よりもはるかに大きな神様の恵みと憐れみにすがり、私の子供たちへの愛よりはるかに大きな神様の子供たちへの愛に信頼して、今日もよたよたと頑張ります!




追記:心理学の実験などでは、○○をしたら、子供が××の行動を見せた、などの結果が出されますが、これはあくまでも、その他の条件を統制した、「実験」でのことです。現実の子育てでは、家庭・生活環境から持って生まれた性格まで、さまざまな要因(心理学でいう「交絡因子」)が関わってきます。そのため、実験で得られたものと同じような結果が、現実の子育ての中でも見られるとは限りません。


 また、親がこれこれこのように子供に接すれば、子供はこれこれこのように育つ、と強く考えるのも、ワトソンの行動主義心理学のようで、よくないなぁと思っています。


 神の似姿に、fearfully, wonderfullyに作られた人間は、実験室のネズミのようではなく、もっとずっと複雑で、美しくて、繊細で、強いのですよね。子供の中に神様が与えて下さっている内なる可能性や賜物やユニークな個性、そして子供が生まれる前からすでに神の書物に書き記されている、子供の人生への神様のご計画ゆえに、心から主に感謝します。そして、親の役割を担わせていただけるとは何と畏れ多いことかと、ただ主の御前にひざまずくばかりです。


 

 ちなみに、『子育てコーチング』の著者、クラウド&タウンゼントは、子供の人格形成に親が与える影響は、わずか3割ほどだと言っています。残りの7割は、本人次第だと言っているのです。このあたりにも関連することを『子育てコーチング』の訳者あとがきで少し書いています。関心のある方は、そちらをご参照ください。