流体力学実験室開設にあたって、シカゴ大学が出したプレスリリースです。




 このページの右の方に、器具を使って地球の大気の流れをデモンストレートしている写真が出ています。とってもきれいに出ています。


 この実験室は「teaching lab」で、実際の研究のための実験室というより、学生に地球流体力学を教えるにあたって、さまざまな実演をして見せることを主目的とする。昨日のぼぼるパパのプレゼンでは、なぜそのようなティーチングラボが重要なのか、とてもよくわかって興味深かった。


 実験室には大きなターンテーブルと、その真上にターンテーブルと同じ速度で回転するカメラが設置してある。ターンテーブルの回転は、地球の自転を模倣する。しかし、観察者がターンテーブルの横に立って観察するのでは、自転する地球を宇宙から見るのと同じで、実際地球上で私たちが体験していることを観察することができない。でも、ターンテーブルと同じ速度で回転するカメラの映像を見るとき、ちょうど自分も自転する「地球」に立って観察していることになる。


 昨日のデモンストレーションの一つは、まずフーコーの振り子。ターンテーブルの上から振り子をぶら下げて、その振り子が独得の軌跡を描いて動くのを回転カメラで捉えて観察。(このフーコーの振り子というのは、地球が自転していることを、目で見て分かる形で最初にデモンストレートした貴重な実験らしい。)テーブルの回転の速度によって、振り子の描く軌跡が変化するのだけれど、どれも美しい模様を描く。カメラで捉えることで、美しい軌跡を目で観察することができて感動的なのだけれど、この軌跡は、数式でもちゃんと表現することができ、回転速度によってどのように軌跡が変化するのか、ちゃんと予測できるらしい。で、その数式というのが、重力と遠心力とコリオリの力の三つの力を含む連立の二階微分方程式で、私のような数学音痴には何がなんだかさっぱりわからない。ぼぼるパパは、「私の授業を取ったことのある学生なら、これこれこうして簡単にこの数式を解く事ができるはずです」と説明。するとと聴衆から「おおお」というどよめき。(特に、学生と思しき人たちの間から,苦しそうなどよめきが起こった。笑)そしてぼぼるパパは続けて、「今までは、これを説明するのに黒板に数式を書いて説明する以外どうしようもなく、そうすると学生達はみんな嫌がって逃げていたものでしたが、これからは実際にデモンストレートすることで、数式の正しさを実感してもらうことができます。」再び聴衆からは「おおお」と納得のどよめき。


 次なるデモンストレーションは、ターンテーブルの上に設置された水槽の真ん中に氷が入った鍋を起き、水槽の氷に近い側と外側の縁に沿って、緑とオレンジ色のインクを点々とたらす。氷が入った鍋は北極の寒さを再現するもので、それによって、水槽内の水に冷たい側とそうでない側の二層ができる。そしてターンテーブルを回転させると、拡散する緑とオレンジのインクがそれはそれは美しい渦を描く。これが、地球上の海流だか気流だかを再現しているらしい。なんかよくわかんないけど、とにかく美しい。こういう美しさも、神さまが創造された自然法則の美しさを表現しているんだなぁと、素人なりに感激だった。


 ぼぼるパパのプレゼンの何がすごかったかって、私のような数学・物理音痴が聴いても、それなりに楽しく、感動的で、そしてこのラボの建設意義が十分に伝わって来たこと。このようなティーチングラボは、全米でも一握りしかない貴重な存在らしい。シカゴ大学の地球物理学科にとっても重要な財産になることでしょう。


 4/17の日記にも書いたように、約2年前シカゴ大学での仕事に行き詰まっていたパパに、このような機会を与えることで祝福し、励ましてくださった神さまに心から感謝。と同時に、1998年12月、パパがシカゴ大学でのテニュアを取った時に祈った祈りが蘇る。あの時、シカゴでのセカンドタームを任じられたと認識した私たちだったけれど、今回は、サードタームの始まりなんだと思う。主よ、これからも一歩、一歩、あなたと共に歩ませてください。




ランデル学長(中央)によるテープカット。フルツ教授のお子さん三人と妹さん。右端はラウリー学科長。




回転水槽に落としたインクが渦を巻く様子。




ぼぼるパパのプレゼンに聞き入る聴衆。




2次元乱流のレジームに見入る人々。




ご招待したMITのマーシャル教授(中央)。かなりの部分で彼の実験室がモデルになっている。


http://nakamurafamily.net/nnn/idle_musing0903.html#9




流体実験室にふさわしく、頭上の半球儀から複雑なチューブを経て、フラスコにドリンクが届くしかけ。フルツ実験室のクリスマスパーティーでの恒例のアトラクションだったそうだ。このレプリカは学科の大学院生たちの手による。